STORY #4

#4 RACE

廃部!?

  • 栗早家鷹
  • やとみ

海月女子学園ボートレース部が6人で本格的なレース練習ができるようになって2か月が過ぎた。部は夏の地区大会に向けて練習に励んでいた。

「うわ~ん!やっぱりけやきちゃんに勝てない!」

練習が終わり、ボートを陸に揚げながら叫ぶこむぎ。

「ほんと、同い年とは思えないのです…。」

ナツもその傍らでうな垂れていた。

「けやきは特別だよ。私でも食らいつくのが精いっぱい…。私といこのでさえ、両手で数えられる回数しか勝ったことがない。」

「そうですねぇ。実力に差がありすぎます。でも、けやきさんを我がボートレース部に引き入れることができて良かったですわ。あとは、顧問の立花先生が戻ってきてくれれば完璧なんですけど…。」

一足先に練習を終え、ガレージで待機していたとあといこのが、ボートの揚陸を手伝いに来た。
ちなみに、顧問の立花は、ボートレース部の合宿後に産休に入ってしまい、それからは他の教師が交代でボートレース部の様子を見ていた。

「あー!また負けた!けやき、もう一回勝負だ!」

ボートの上で叫んだのは、上級生としてまだ一回もけやきに勝てずにいるふたばだ。
よほど悔しいらしく、最近は下校時間ギリギリまでけやきに勝負を挑んでいた。

「…何度やっても同じだと思うけど。」

「ふたばさん、けやきさん、もうすぐ下校時間ですよー。あと一勝負にして、早く片付けてくださいねー。」

そんな風景が、ここ数日のボートレース部の日常となっていた。
だが、ボートレース部に最大の危機が訪れることになるとは、誰も予想していなかった。

下校時刻後の職員室。ある教師と校長が会話している。

「風守先生、じゃ、ボートレース部のこと、よろしく頼むね。」

「はあ…でも、校長先生、俺、ボートの知識もないし興味もないんですけど、いいんですかね?」

「人手不足だからね。それに君の師匠の立花先生のご指名じゃない。まあ、ボートレース部が活動できる間の一時的なものだからさ。よろしく。」

「はいはい、わかりましたよ。一時的ね。」

「それじゃ、私は帰るから戸締りよろしくね。」

用が済んだ校長は、さっさと帰り支度を済ませ去っていく。

「……。まったく、やだねぇ組織ってやつは。俺も早く帰りてぇ。」

翌日、いつものように練習に励む6人。そこへ風守がやってきた。
風守誠太郎。海月女子学園に2年前赴任した理科教師だ。海月女子学園に来る前は公立高校で教鞭をとっていたらしい。

「やってるねぇ。で、部長はと。えーと、鈴ヶ森か。鈴ヶ森~、ちょっといいか?」

「あら、風守先生。どうされたんですか?」

「部員を集めてくれ。話がある。」

「はあ。わかりました。」

風守の指示で、部員を集合させるいこの。 

「集まったな。早く帰りたいから、手短に伝えるぞ。お前らに伝えることが二つある。まずは、今日から俺がこの部の顧問に決まった。よろしく。」

「え~、なんで理科教師がウチの顧問なんだ~?」

ふたばが、率直な疑問をぶつける。

「えらーい人のご命令と立花先生のご指名。」

「先生、ボートやったことあるんですか?」続けて質問するこむぎ。

「ない。」

「じゃあ、なんで?」

はあ…と溜息をつき、風守は続ける。

「話を進めるぞ。もう一つの伝達事項だが、ボートレース部はこの夏の地区大会で優勝できなければ、廃部になることが決まった。」

「えぇー!」

衝撃の事実に驚愕を隠せないこむぎ達。

「いこの、知ってたのか!?」

「いえ、私も今初めてです…。」

「何でだよ!?」

風守に詰め寄るふたば。
暫く考えこみ、ナツが呟いた。

「……。きっと、新理事長の方針なのです。」

「正解だ、昭和島。みんな夏の地区大会まで頑張ってくれ。今の調子じゃ優勝は難しいだろうしな。じゃ、俺はテスト作成があるから帰る。ケガするなよ~。面倒ごとが増えるのはノーサンキューだからな。」

廃部という言葉に呆然とする部員たちを尻目に風守はピットを去る。

「ちょっと待ってよ!先生!私、やっとボートレースができるようになったのに酷すぎるよ!先生ー!」

こむぎの声がピットに空しく木霊した。

廃部!?

STORY

小説家

栗早家鷹

代表作

???

ILLUSTRATION

イラストレーター

やとみ

やとみ

代表作

『ココを異世界とする!』作画 (KADOKAWA)
『異世界で怠惰な田舎ライフ。』1~5巻挿絵(アルファポリス)
『Guardess in Eden』キャラクターデザイン (バンダイ)