SEASON2
SEASON2
#8 RACE
「さいて~」
「最低ですね」
「最低だぞ」
「最低」
「最低ですわ」
「最低なのです」
地区大会1日目を終えて、海月女子学園に割り振られた宿舎の大部屋でボートレース部の6人が異口同音に教師を罵倒する。これから明日のレースに向けてミーティングをすることになっていた。
「まさか、写真撮影に許可が必要だったとはねえ」
「先生、ホント、恥ずかしかったよ」
「あのままじゃ事務所に連れてかれるところだった…」
風守は撮影許可の手続きなしに写真撮影を行ったため、大会警備員に不審者扱いされたのだった。職質される風守に気づいた部員が全員で警備員に事情を説明し、やっとのことで顧問として認められ、大事には至らなかった。
「顧問なのに何で初歩的な手続きを調べてないんですか?」
「だって、興味ないんだもん。なんなら今すぐ帰りたい」
「興味ないっていうか、常識外れもいいとこだろ」
とあとふたばが、呆れながら風守を攻め立てた。
「しかし、お前らの部屋、俺の部屋より良くない?」
「普通でしょ」
軽くあしらうけやき。
「いやいや、俺の部屋より3倍は良いね。赤くて角がついてんじゃないの?」
「はぁ?」
風守の比喩は誰もピンと来ていない。けやきは目を細め風守を睨むが、気にする様子もなく風守は話を続ける。
「俺の部屋なんて6畳一間で畳はシミだらけ、さらに虫と相部屋ときたもんだ。しかも、なんかここより暗いし」
「この宿舎、現在リフォーム中で、学生棟を優先してリフォームしたみたいですよ。でも、教員棟の大半もリフォームが終わってると聞いていましたが…」
いこのが、荷物を整理しながら、答えた。
「えぇ…何それ。いじめ?」
「でも、狭くて汚い部屋って先生っぽいのです」
「だよね!先生の理科準備室って、狭くて、暗くて、物がいっぱいあるし。先生、意外と落ち着くんじゃない?」
「おい、人を虫みたいに揶揄するんじゃねえよ。何かキッチンに出てくる黒い奴みたいじゃねえか」
日頃の行いの悪さから、部員の風守に対する扱いは酷い。
「いいから、早くミーティングを始めませんか?」
とあが迷惑そうに割って入った。
「はいはい、やりますよ。じゃあ、準優勝戦と優勝戦の割り振り決めちゃってね。明日の朝の変更は受け付けないからね」
地区大会の準優勝戦と優勝戦は、出場メンバーを各学校が任意で決められることになっている。さらにチーム戦の様相が濃くなり、戦略も問われる。
議題は、準優勝戦と優勝戦で誰が出走するかを決めることだ。
基本的に準優勝戦で出走した者は優勝戦に出走することはできない。
現在、海月女子学園は1位ではあるが、2位の東川高校との差は僅差。準優勝戦で差をつけて得点を稼ぐか、優勝戦まで切り札をとっておくかの2択で話し合いが続いている。
数十分に及ぶ話し合いの結果、海月女子学園は準優勝戦で東川高校との差を広げる作戦をとることになった。
「はぁ…先生、割り振りが決まりました」
「あ?終わった?」
寝っ転がりながらスマホを操作していた風守にいこのがため息交じりで声をかけた。
「準優勝戦、1レースはとあさんとけやきさん。2レースはふたばさんと私。優勝戦は、こむぎさんとナツさんで出場します」
「ふうん。みんな、それでいいのね?特に平和島と昭和島」
目線をスマホに落としたままこむぎとナツに確認をとる風守。
「…私は絶対優勝したいから…。勝てる確率を少しでも上げた方がいいと思う。みんなに頼って申し訳ないけど…」
「私も同じなのです。大会の空気にもまだ慣れないし…私達二人はまだ力が安定してないのです…」
二人の表情は少しくらいが、目には闘志がこもっている。
「あっそ。じゃ、そういうことで」
二人に素っ気ない返事を返し、部屋を出ていこうとした風守にこむぎが不思議そうな顔で問う。
「そういえば、先生、さっきから熱心にスマホで何してるの?」
「部の活動記録の更新。昼間話したでしょ」
「どーせ、誰も見ないだろ」
ふたばが吐き捨てるように言った。
「いや、そうでもないぞ。なんなら、海月女子学園ボートレース部のフォロワーはめちゃくちゃ増えた」
部屋の出口の柱にもたれながら、風守はスマホをポチポチ操作しながら答えた。
「学校のSNSのアカウントでフォロワーが一気に増えると思えないけど…」
けやきが思案顔で呟く。
「そうだな。だから学校のアカウントじゃない。俺が部専用のアカウントを作った」
「ええぇぇぇぇ!」
六人が揃って驚愕のあまり叫んだ。
「ちょっ…ちょっと、先生!いつから始めたんですか!?」
慌てながら問い詰めるいこの。
「2、3週間前かな。立花先生への報告がめんどくさくて興味ある人は勝手にみるだろと思って作ったわけ。練習風景とか撮影してたんだよ、俺」
「そ、そんなの聞いてないのです!」
ナツは頬を膨らませながらご立腹のご様子。
「言ったら撮らせてくれないでしょうが。こういうのは自然な表情がいいんだよ。知らんけど」
「だからって、私達の承諾もなしに勝手にSNSに投稿するなんて!お父さんとお母さんに怒られちゃうよ~!」
こむぎが赤面しながら、頭を抱える。
「だーいじょうぶ!お前らのご両親には許可を取ってあるから。それに学校の方の部の活動記録にも顔は載るわけだし、何の問題もない。伊坂先生も好きにしろって言ってたし」
「先生!ホントに盗撮してたなんて!犯罪ですよ!」
いこのが、風守に近づきスマホを取り上げようとするが、風守の反応の方が早くあっさりと躱されてしまった。
「はい、いただき~。いいよー、いこのん」
「え?」
「鈴ヶ森、いい怒りっぷりだ。ほれ」
「あ…あぁ……先生!ひ…酷いです!」
突然の出来事に戦意喪失し、へたり込むいこの。スマホの画面には、怒った顔のいこのが映し出されていた。
「あんた、ホントにどーしようもない教師だな!」
「あなた、ホントに教員免許持ってるんですか!?」
ふたばととあが、風守を怒鳴りつける。
「おっと、大森と京浜を怒らせるとヤバいからな。じゃ、本日の取材は以上でーす。おやすみなさーい」
「はぁ…バカ教師…」
けやきに呆れられながらも棒読みで捨て台詞を吐き、そそくさと部屋を出ていく風守。それを追うとあとふたばだったが…。
消灯時間でーす。各学校の生徒は速やかに部屋に戻ってくださーい。繰り返します…
消灯時間を告げる館内放送に風守の追跡は断念せざるを得なかった。
「あいつ~、絶対許さないぞ~!」
「ふたば!あんまり大きな声を出すな!今日は諦めよう」
*************
布団に潜り込んだ6人は、風守が立ち上げた部の専用アカウントを検索した。
アカウント名は『海月女子学園ボートレース部(廃部寸前!!)』
アカウントの作りはアイドルのオフショット満載のSNSアカウント風で無駄に凝っており、3週間程前の6人の練習風景と整備風景、ミーティング風景などが掲載されていた。
そして、最新の更新は『みんなでパジャマミーティング!明日は決戦!』と投稿されていた。
「きもい」
「気持ち悪いな」
「きもいぞ」
「気持ち悪い」
「気持ち悪いですわ」
「気持ち悪いのです」
全員の思いが一つになった瞬間だった。
*************
翌日、大会最終日。地区大会の雌雄が決する日というだけあって、ピット内は昨日以上に騒々しかった。
小規模ではあるが、マスコミ関係の取材も入っている。
海月女子学園ボートレース部の6人は、準備体操をしていた。
「今日は取材も入るんだね~」
こむぎが、東川学園の彩峰に群がる取材陣を眺めながら言う。
「一応、関東地区の代表が決まる大会だからな」
とあが伸脚をしながら答えた。
「じゃじゃじゃあ、私達も取材されたりするのですか?」
ナツが目をキラキラさせながら質問する。
「うちは関係ないぞ~。今までも取材なんかされたことないしな~」
「えぇー、そうなのですかぁ。つまんないの~」
ナツの淡い期待を砕きながらふたばは、前屈・後屈運動を続ける。
そうこうしていると選手登録を済ませた風守が寝ぐせ頭のままやってきた。怠そうにあくびをしている。
こむぎが風守に気づき、指さしながら絶叫した。
「あ~!盗撮教師!」
「ばっか!お前!誤解を招くような発言するんじゃねえよ!違う取材始まっちゃうだろ」
「先生、許しませんよ。社会的に抹殺します」
いこのの声は、明らかに怒気を含んでいる。
「お前が言うとマジになっちゃうだろうが。それはさておき、お前らを取材したいって言われてるんだけど、どうする?ちゃんと新聞に載るらしいけど」
「私たちに取材ですか?物好きもいたものだな」
とあが興味なさげに問う。
「世の中、色んな人がいるよね。俺の作ったSNSを見て取材したいと思ったらしいよ」
「あれを見る人、いたんだ」
けやきが、辛辣なコメントを寄せる。
「いたんだなぁ。残念ながら」
「いやいや、いいアカウントだと思いますよ!高校女子ボートレース部の日常がファンに伝わるし!こういうアカウントってありませんでしたしね!」
風守の後ろから、見知らぬ男の声が響いた。
「先生、どなたですか?」
いこのが不審そうな顔で問う。すると男は、丁寧かつ低い物腰で自己紹介を始めた。
「ああ、すみません。私、芸人をやらせてもらってるこんせいそんと申します。ボートレースが大好きで、一応ボート番組のMCさせてもらってます。今回は、私が新聞で連載しているコラムに皆さんのことを書きたいと思いまして」
こんせいそんと名乗った男の申し出にやや逡巡する6人。
「ホントにこの人、芸人なのですか?」
「見たことないぞ」
「あ、でもSNSアカウントあるよ。ボートレース平和島で番組やってるみたい」
「なるほど、芸人というのは嘘じゃないみたいだな」
「皆さん、いかがいたしましょうか?」
「新聞に載るなんてなかなかないし、私は取材受けてみたいな」
「先生のSNSよりはマシでしょうしね」
「にゃはは~、それもそうだな~」
「私は、気が進まない…」
「けやき~、聞かれたことテキトーに答えときゃいいんだよ」
「ホントに…?」
「先生のSNSで捏造されたイメージを払拭しましょう!」
「いこの先輩、必死なのです…。でもちょっとワクワクするのです」
6人はコソコソ作戦会議をしていたようだが、全員の意思は固まったようだ。
「先生、取材お受けいたします!」
「そう。じゃ、こんさん、あとよろしくね」
「はい!お任せください!」
こんせいそんの返事と同時に新聞社のカメラマンがやってきて、海月女子学園ボートレース部の取材が始まった。
*************
取材も終わり、準優勝戦1レースが始まろうとしていた。準優勝戦の配点は1着15点、2着13点、3着11点、4着9点、5着7点、6着6点となっている。
1レースに出場するのは、とあとけやきだ。
6人は、ピットに設置された番組が発表される掲示板に向かう。
彼女たちが一番気にしているのは、2位の東川高校がどのような作戦でレースに出場するのかということだ。
特にエースの彩峰がいつ出てくるのか。それが一番の気がかりだった。
準優勝戦の1レースの番組は1号艇東川高校・彩峰はづき、2号艇とあ、3号艇東川高校、4号艇けやき、5号艇追川高校、6号艇鮒田女子学園と掲示されていた。
「彩峰は…準優勝戦の1レースか…」
「東川も私達と同じ作戦のようですね…。昨日の雪辱を晴らせないとは…」
とあの横でいこのが黒いオーラをまといながら呟く。ふたばは、ダークいこのの横で若干引きつつ素朴な疑問を投げかけた。
「はは…でも、彩峰をこんなところで投入しちゃってもったいないんじゃないかぁ?」
「きっと、なにかあるのです。昨日の1レース1号艇の子、すごく上手だったし」
「ナッちゃんのいう通りかも…。あの子、すごく上手だった。同じ1年とは思えないくらい…」
「…そろそろ、始まる」
東川高校のエース、彩峰が1レースに出場することに一抹の不安を覚えつつも、準優勝戦1レース二人が向かう。
「とあちゃん、けやきちゃん、頑張って!」
「任せろ、こむぎ!」
「いい流れを二人につなぐ」
*************
二人は無言で乗艇し、ピットアウトを待つ。この時間がいつもより長く感じる。
とあは、ただただ無心になることを心掛けて、『出走』のランプ点灯を待っていた。
すると、1号艇の彩峰から声を掛けられる。
「私が、1レースに出てくるとは思わなかったんじゃない?」
「……」
とあは、彩峰を一瞥するが、返事はしない。
「無視?ふん!まあ、いいけど。私もあんたらがここまでやるとは思わなかったよ。だから、本気で潰させてもらうよ。準優でも優勝戦でも」
「なに…?」
彩峰の不吉な言葉にとあが動揺していると『出走』ランプが点灯した。
6艇が一斉にピットアウト。
6艇は枠番通りに並び外枠の3艇からダッシュスタート。内枠3艇もタイミングをはかり動き出す。
けやきが、ダントツでいいスタートを切り、他艇より先行した。
それを1号艇の彩峰と2号艇のとあが追う。
1マークに差し掛かり先行したけやきは、一気に舳先を内側に傾け、華麗なモンキーターンを決める。
とあも1号艇の彩峰を捲ろうと1号艇の外側からターンしてけやきを追いかける。
1マークを曲がりきった直線では、けやきが後ろで並走するとあと彩峰に2艇身ほど差をつけていた。2着争いをしている後ろでは、もう一人の東川高校の生徒が迫る。
「…いける」
とあも1号艇の彩峰を捲ろうと1号艇の外側からターンしてけやきを追いかける。
けやきは後続艇の様子を確認し、勝利への手ごたえを感じながら2マークを旋回する準備に入ろうとした時、後方からエンジン音に紛れて、とあの叫ぶ声が聞こえた気がした。
「けやき!気をつけろ!」
「!?」
けやきが2マークを旋回するために船首を傾けながら後続艇を見やると、とあの内側を走っていた彩峰が舳先をあまり返さずに突っ込んできていた。
そのまま、けやきの艇の内側に入り、彩峰はけやきに艇をぶつける。
「悪いね!あたし達も優勝したいんだよ!」
「こいつッ!!」
彩峰はけやきを弾き飛ばし、前に躍り出た。
バランスを崩したけやきは、アウトコースまで膨らんでしまう。
「負けない!」
ハンドルを切り、艇のバランスを立て直しアクセルを握りこむけやき。
2マークでは、彩峰が作った隙に乗じ、3号艇の東川高校がとあに差しを決め、3位に躍り出たところだった。
「完全に出し抜かれた!ここまで、チームワークが醸成されてるなんて…」
毒づきながら、2マークを旋回し3号艇を追いかけるとあ。
しかし、その差は2艇身、3艇身と広がっていく。
弾き飛ばされたけやきも彩峰との差は、埋めようがなくなっていた。
「せめて、2着には入る」
けやきは、近づく3号艇の東川高校の前に躍り出て、相手を引き波に乗せる。これで相手のスピードは殺せたはずだ。
2周目1マークを旋回し、向こう正面に入ると勝負は決した。
1着彩峰はづき、2着けやき、3着東川高校、4着とあ、5着鮒田女子学園、6着追川高校。
肩を落としながら2人がピットに戻ってきた。
「とあ、けやき、大丈夫か!?」
ふたばが駆け寄る。
「不良航法ギリギリの戦法を取るなんて…」
いこのは、彩峰を睨みながら苦虫を噛み潰した表情を浮かべている。対する彩峰の表情は明るく、いこのの視線に気づくと不敵な笑みを浮かべていた。
「迂闊だった…。最初から彩峰はけやきを狙ってたんだ」
「私も油断した。ごめんなさい…」
二人は唇を噛み後悔を口にする。
「大丈夫だよ!二人が頑張ってくれたお陰で、まだ点差は少ないし」
「そうなのです!ふたば先輩といこの先輩が、また逆転してくれるのです!」
こむぎとナツが二人を励ますが、ふたばといこのの表情は険しい。
「ふたばさん、思ったよりも東川高校はチームとして完成しているみたいです」
「そうだな、いこの。個人としての技量を高めていた私達と比べたらあっちの方が上手だ」
「それに彩峰さんを1レースで投入したことも気になります。やはり昨日の1レースの子が…」
「まあなぁ。でも、もうジタバタしても仕方がないし、私達にできることをやろうぜ」
「…。そうですね、こむぎさん達のためにも…」
*************
準優勝戦2レースが始まった。
1号艇及び2号艇東川高校、3号艇ふたば、4号艇追川高校、5号艇いこの、6号艇鮒田女子学園。
乗艇したふたばといこのは、お互いに目配せをしながら『出走』ランプの点灯を待つ。
ランプ点灯とともに6艇がピットアウト。
いこのの5号艇が4号艇を抜いた。4コースに陣取り、スロースタートをするつもりのようだ。
「い、いこの!?」
ふたばは驚いていこのに声をかけた。
「ここで点差を広げられるわけにはいきません」
「た、確かに…」
いこのに気圧されるふたば。
ダッシュ勢がスタートを切り、少し遅れたタイミングで内側の4艇も加速する。
全艇ほぼ横並びでスタート。1マークに突進していくが、ターンマークギリギリのインコースを1号艇2号艇がふさぐ。
ふたばといこのは、捲りにかかるが、東川高校の2艇が先に旋回を終え、直線に向けて体制を立て直される。
「あぁッ!やはり組織的な走り方を!」
「んにゃあ!こいつら邪魔だぁー!」
今度は、やや遅れて直線に入ったふたばといこのの前方を東川高校の2艇がふさぐ。
「ぶぁっ!ああーもう!どけー!」
ふたばに引き波をもろに引っ掛け、東川高校の1号艇が先頭に躍り出る。
いこのはアウトコースに向かい東川高校の2号艇を躱そうと必死だ。
「キャッ!引き波を避けな…きゃ!」
水しぶきを掛けられながらも艇を外側に向けて引き波を避けようとするいこの。
2マークに差し掛かり、東川高校の2艇は悠々と旋回していく。
ふたばはインコースを走っていたが、引き波によりスピードを殺され、4位まで順位を下げられた。いこのは、引き波を避けていたため、スピードを完全に殺されることはなかったが、アウトコースから大回りして旋回せざるを得ない。
ふたばはターンマークギリギリを、いこのは大回りで2マークを旋回した。その間を狙って4号艇と6号艇が迫る。
「ここで後続に負けるわけにはいきません!」
「くっそー!抜かせるかぁ!」
二人は2マークを旋回し終えるとアクセル全開で2周目の直線を走り抜ける。
迫る後続艇を抑えるため、二人は東川と同様の戦法を取ることにした。後続艇2艇の前に出て、スピードを殺す。
しかし、東川高校の2艇との差は大きく開いてしまった。
2周目1マークに差し掛かるところで、すでに4艇身差。どんなに頑張っても埋められない距離がそこにはあった。
結果、1着2着に東川高校、3着いこの、4着ふたば、5着鮒田女子学園、6着追川高校となった。
この時点で東川高校が102点となり首位に。海月女子学園が91点で次点となり、ピットで観戦していた4人は揃って肩を落とす。
「そんな…あの二人が手玉に取られるなんて…」
「東川は組織として完成してる…」
「こむぎさーん!まずいですよー!」
「…うん…」
こむぎは言葉少なに小さな声で返事を返す。
海月女子学園にとっては苦しい状況となり、準優勝戦の幕は閉じた。
小説家
???
イラストレーター
『勇者サマは13歳!』挿絵(KADOKAWA)
他